新型コロナウィルス感染拡大にともなう休業を実施する事業主に対して、
政府が従業員の休業手当を補填する制度、雇用調整助成金。
特例措置も令和3年2月末まで延長されました。
2020年1月24日~6月30日までの休業分についても、まだ間に合います。
「8月31日が期限だったので諦めていました、、、」という企業さま、諦めるのはまだ早いです。
詳しくはこちら
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000662501.pdf
今回の記事では、雇用調整助成金支給申請に伴い
当事務所に寄せられたお問い合わせの中から間違いやすいポイントを3つだけ
ピックアップして解説していきます。
できるだけ分かりやすく書くために細かい説明は致しません。
なんだかハードルが高くて面倒だな、それくらい会社が負担して従業員に払おう。。。
とお考えの社長さま。
諦めないでください。
必ずヒントが見つかります。
それではいきましょう。
目次
ポイント1.
小規模事業主でも通常の書式を利用することは可能
厚生労働省の雇用調整助成金トップページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
こちらから「申請手続き」を見ると、「小規模事業主の方向け」と「中小・大企業の方向け」という2つにタイプが分かれます。
新型コロナウィルスによる特例期間のみ、書式を簡易化するために、「小規模事業主用」の書式が登場しています。
「中小・大企業の方向け」という書式は「通常の書式」と呼ぶことにします。
これだけ見ると、小規模事業主は通常の書式を利用できないように見えます。
しかし、そんなことはありません。
小規模事業主でも通常の書式を利用して助成金を申請することは可能です。
それでは、小規模事業主とはどのような会社があてはまるのでしょうか。
1-1.小規模事業主とは
小規模事業所の事業主とは、常時雇用する労働者が概ね20人以下の事業主のことをいう。
常時雇用する労働者が概ね20人以下というかなりざっくりした表現となっています。
26人でも、29人でも、各都道府県の労働局によって見解は変わる可能性もありますが、厚生労働省としては、30人を超えている事業所であっても、簡易的な方法により積極的な活用を促すこと、としています。
これは、新型コロナウィルス感染症にともなう助成金申請の簡易化のために、簡単な書式を使ってもいいよということなので、
どちらでも好きな書式を選ぶことができます。
確かに小規模事業主用の書式は添付書類も最小限に抑えられており、とても簡単になった印象です。
しかし、「小規模事業主用の書式」と「通常の書式」、選択によっては助成金額が大幅に変わる可能性があるため、要注意です。
1-2.通常の書式を使う場合
通常の書式を利用して申請書を作っていると、
不正にならないですか?というご質問も頂きますが、心配要りません。
記載例では、「a.労働保険料確定保険料申告書」を利用して金額を計算しています。
入力を進めて、既に(4)の平均賃金額(※)が15,000円を上回っている場合、そのままでOKです。
ところが15,000円を下回っている場合、「b.給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を選択してみるのもいいと思います。(4)の平均賃金が変わる可能性もあります。
実際に支払った休業手当の額よりも助成金額が上回るとは?
実際に支払った休業手当の額と助成金額を比べた場合、助成金額の方が多い場合があります。
どうしてこのようなことが起こるのかというと、助成金額は会社全体の給与額の平均値(上限15,000円)で決まるからです。
ある会社の給与額の平均値が1万5000円だった場合、誰を休ませても、1人あたり1日15,000円の助成金額となります。
とあるAさんの実際に支払った休業手当の額が1日あたり10,000円だったとしても、
会社には1日あたり15,000円の金額が支払われるのです。
助成額算定書を記載していると、実際に支給される金額を見て驚かれる方も多いです。
これが通常の書式を使った場合と、小規模事業主用の書式を使った場合の最大の違いと言えるでしょう。
1-3.小規模事業主用の書式を使う場合
小規模事業主用の書式を使った場合の注意点としては、
実際に支払った休業手当の額が助成金額となる
※(だいたいの場合)
これにつきます。
助成金額は実際に支払った休業手当の額を超えることはありません。
逆に言うと、通常の書式を使った場合は、実際に支払った休業手当の額よりも助成金額の方が高くなるケースがございます。
これらを踏まえて、小規模事業主の方でも、通常の書式を利用して助成金を申請することは多々あります。
なるほど、なんとなくわかってきました。
でも、実際に支払った休業手当の額ってなんですか?
解説していきます。
ポイント2.
小規模事業主向け 実際に支払った休業手当の額とは
小規模事業主用の書式を使う場合、「様式新特小第2号休業実績一覧表」を記入していると、⑤判定基礎期間の休業手当の額(円)
で手が止まります。
月給30万円、休業手当は100%支払った。休業は10日間。。。休業手当はいくらになるのでしょう。
2-1休業手当の額を計算してみよう
次の例で考えます。
- 月給30万円のAさん
- 土日祝日休み
- 休業は10日間
- 休業手当として100%支給
- その結果、月給30万円をお支払い
休んでも休まなくても、固定で30万円を支払ったパターンです。
この30万円の中には、実際に労働した賃金と、休業していてもお金を受けられた休業手当の額が混ざっています。
この30万円を切り分けてください、というのが「実際に支払った休業手当の額を計算する」ということです。
この会社で、1日働いた場合にいくら給与が払われていることになるのか、を計算します。
休業が発生した月の所定労働日数を求めましょう。
コロナがあってもなくても、本来であれば働いていたであろう日です。
土日祝日休みの場合、だいたい21日でしょうか。仮に21日とします。
21日働いて、30万円支払われるのであれば、1日あたり、30万円÷21日=14,285円の給与ということになります。
100%の休業手当を支給するのであれば、この日額14,285円を休業させた日数分払えばいいということですね。
例の会社では、
21日のうち、10日間休業がありました。
よって、14,285円×10日間=145,850円
これが、⑤判定基礎期間の休業手当の額(円)になり、実際に支払った休業手当の額
と切り分けられたことになります。
小規模事業主の場合、実際に支払った休業手当の額が助成金額になるので、145,850円が助成金として支給されます。
2-2共通の添付書類、出勤簿と賃金台帳で確認する
小規模事業主用の書式を使っても、通常の書式を使っても、必ず提出が必要になるのが、
- 出勤簿
- 賃金台帳(給与明細でも可)
です。
出勤簿で休業日数を確認し、賃金台帳で休業に対する手当がきちんと支払われているのか、を確認します。
なにから手を付けたらいいか分からない、という方は、まず出勤簿を付けましょう。
- 出勤した日
- 休業させた日
- 最初から休みだった日(休日/公休日) この3つを区別し、記録していってください。
助成金をいざ申請する際に、この記録がとても重要になります。
カレンダーに手書きで書いたものでもコピーを取って提出可能です。
ここは頑張りましょう。
2-3助成金額の出し方
先ほど、実際に支払った休業手当の額が助成金額
という説明がありました。
だいたいの場合が、これに当てはまります。
しかし、悲しいことに助成金には上限が設定されており、ニュースでも話題となった日額15,000円という数字です。
上限を超えた部分については、会社負担となります。
具体例でいうと、月給40万円、土日祝日休みの場合ですと、日額15,000円を超えてきますね。
40万円÷21日=19,047円(日額)>15,000円
休業10日とすると、休業手当の額は190,470円
これと、
15,000円(日額上限)×休業10日=150,000円
を比較し、どちらか低いほうが支給
になるため、この場合の助成金額は150,000円となります。
助成金額の計算式は、申請書「様式新特小第1号」の下の方に記載があります。
週5日勤務のフルタイムであれば、返ってきます。日額が15,000円を下回っているからです。
ところが、とても時給単価がよく、週3日、月12日働いて固定で30万円(どんなお仕事でしょう)であれば、
30万円÷12日=日額25,000円となってしまうので、30万円そのまま返ってくることはありません。
いかがでしょう。
なんとなくわかってきましたか?
ポイント3.
労働基準法で定める平均賃金は一度定めたらそれを使い続ける
前3か月に支払われた給与の総額を歴日数で割って、、、6割にして、、、休業手当を計算する。
実は、この記事では3か月分の給与総額や歴日数のお話しを一切して参りませんでした。
よく言われる3か月分の総額や歴日数を使った計算は、労働基準法で定められた、最低限これだけば支払わないと罰しますよ、
という基準になります。
つまり、必ずしも3か月分の総額を出して、歴日数で割って、、、をしなくて良いのです。
休業手当の額は、最低ラインはあってもそれ以上払うのであれば、計算方法に決まりはないからです。
最低ラインさえ守っていれば、会社は怒られることはありません。
そうは言っても労働基準法で定める平均賃金で計算して休業手当を払います、4月5月6月と払いました、
次の支払いを控えています。
という会社は多いです。
4月5月6月に支払ったときは、1月2月3月の総額を出しました。7月に支払う時はどうしたらいいですか?
ここで止まってしまう方がいらっしゃいます。
解説していきます。
3-1.労働基準法で定める平均賃金で支払った場合
労働基準法で定める平均賃金の計算方法をおさらいします。
条文は次の通りです。
「この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう(労働基準法第12条第1項)。」
事由の発生した日以前3か月間、とあります。
事由とはなんでしょう。
3-2.事由の発生した日とは?
今回の新型コロナウィルス感染症拡大にともなう、特例の雇用調整助成金でいう
事由の発生した日とは、新型コロナウィルスによって、休業が発生した日、休業の初日となります。
4月8日から休業を開始したのであれば、4月8日が事由の発生した日です。
ここで、給与の計算期間をマッチさせます。
以下のように、直前の賃金締切日を使って3か月遡るからです。
「賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する(労働基準法第12条第2項)。」
末締めの会社とします。
直前の締め日は3月31日です。
そこから遡り3か月となるので、1月2月3月分のお給料 となります。
3-3.よくある間違い
そして間違いやすいポイントですが、事由の発生した日 は動きません。
新型コロナウィルスにより休業した初日は、そのまま固定です。
平均賃金を計算するときに、1月2月3月を使って、次は4月5月6月を使って、、、、
これでは、事由の発生した日を動かしていることになります。
1月2月3月で固定であれば、4月の休業も、5月の休業も、6月の休業も、最初に出した平均賃金を使い続けます。
よくあるお問い合わせでは、
次は7月の休業手当を支払うために、4月~6月の総賃金を歴日数で割って出そうと思います。4月の休業日はどうしたらよいですか?
これはまさに、事由の発生した日が固定されず、毎回毎回平均賃金を計算し直そうと思ってしまっているからではないでしょうか。
よって、平均賃金の再計算は不要です。7月の休業手当も、最初に出した平均賃金を使ってOKです。
おわりに.
いかがでしたでしょうか。
雇用調整助成金を申請する際に、小規模事業主用の書式と通常の書式を使った場合の助成金額の違い、
休業手当の簡易的な計算方法、
平均賃金算定の際の間違いやすいポイント、
をそれぞれ解説しました。
もういくらにもならないから会社で負担しよう、とお考えの経営者さま。
まだ間に合います。諦めるのはまだ早いです。
活用できるものはすべて使う精神で、コロナ時代を生き抜きましょう。
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