近年、若年層を中心に利用が増加している「退職代行」サービス。
退職の意思を本人に代わって勤務先へ伝えてもらえるこのサービスは、心理的・物理的に退職を言い出しにくい人にとっての「駆け込み寺」として存在感を増しています。
「退職代行」は労働者・その家族・経営者・上司・同僚・など様々な目線から意見が飛び交っていますが、今回は
労務のスペシャリスト、社会保険労務士の目線での意見
退職したいけど会社に言いづらい時の対処法
を綴っていこうと思いますので、参考になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。
目次
1.退職代行とは?
「退職代行」というワードはよく聞くけれど、
そもそも退職代行とは…?どう利用する?法に反しない?
など、興味があっても、実際どんなものなのか、
利用するにあたって不安に思う人もいるかと思います。
まずは、その仕組みや、利用の方法、料金の目安などをご紹介します。
1-1.退職代行サービスの概要
退職代行サービスとは…
労働者が会社を退職する際に、本人に代わって退職の意思を会社に伝え、手続きを進めてくれる民間サービス。
労働者が直接上司や会社の人事に退職の意思を伝えずに、専門の業者が変わって退職手続きを行ってくれます。
「辞めたいけれど、自分では言い出せない…」
と悩む労働者がこのサービスを利用し、
電話やメールを通じて退職の意思を伝えることを代行します。
この退職代行サービスを運営しているのは、
弁護士や労働組合、民間企業など様々です。
1-2.退職代行サービスの利用状況とそのニーズ
2024年5月~2025年内で、退職時に「退職代行サービスを利用して退職した」と回答した人は14%でした。
つまり、約7人に1人が退職代行サービスを利用しているということです。
また、SNSやサービスのHPから情報を得る20代の利用者が最も多い状況でした。
退職代行を利用をする主な理由は、
・人手不足による労働者への過剰な業務量や依頼
・職場の人間関係による精神的ストレス
・パワハラ・モラハラ・セクハラ・カスハラ等ハラスメント
をはじめ、職場で感じる強いストレスや悩み、
心身への負担により、自力で退職を申し出ることが難しいケースが多いです。
また、近年のトレンドでもある「ノマドワーカー」「インフルエンサー」「YouTuber」などが増えたことにより、現状の働き方を見直すきっかけに繋がっているといえるでしょう。
1-3.退職代行サービスのフロー
退職代行サービスの一般的な流れは以下の通りです。
注意点として、弁護士や社会保険労務士でない業者は交渉できません。
依頼者は安心して退職手続きの完了まで待っていることができます。
1-4.料金形態
退職代行サービスの料金は、業者によって異なりますが、
相場は以下の通りです。
・民間業者:2万~3万円
・労働組合系:2万5000円~3万5000円
・弁護士事務所:3万~5万円(法的交渉も含まれます)
※金額は相場です。業者によって前後することがあります。
業者によっては、分割払いに対応していたり、金額返金保証制度、割引制度を設けられているところがあります。
2.退職代行が必要とされる背景:職場環境と労働観の変化
では、退職を代行を実際に利用する人はどのような層なのでしょうか?
PRタイムズによると、2024年における退職代行の利用者のほとんどが20代、次いで30代、40代…という順番になっています。
参照:【退職代行利用者のアンケート調査結果を発表】4963人の利用者から明らかになった退職代行サービスの利用実態とは | 日本労働産業組合のプレスリリース
驚くべきことに、なんと70代も利用するケースがあるとのことです。
参照:https://www.fnn.jp/articles/-/811096?display=full#google_vignette
上記記事からも、仕事や人間関係で精神的に追い込まれてしまった人が利用するケースが多いようですね。
2-1.退職代行を利用した人の職場環境
退職代行サービスを利用する人の多くは、退職を申し出ること自体が困難と感じる職場環境に置かれています。
典型的なケースは、
・上司に退職を伝えたが、引き留められる
・精神的に疲弊していて、退職を申し出る気力がない
・ハラスメントを受けている
・就業規則や契約内容に大きな相違がある
など、様々です。
このような状況下で、「自分を守る手段」として、
退職代行を選択するケースが目立ちます。
2-2.労働者が求める労働環境
現代の労働者は、単に給与が良い、福利厚生が充実している、だけでなく、「心理的安全性」や「柔軟性」、「働きやすさ」を重視する傾向があります。
価値観の変化により
合わない職場で無理をしながら働くより、自分らしく働ける環境を求めて転職する
という選択肢が一般的になりつつあります。
結果として、辞めにくい職場環境における「逃げ道」として退職代行が機能しているのです。
3.社労士目線で見る「退職代行サービス」
社会保険労務士である私の視点から見ると、退職代行サービスの存在は、労務管理の課題を浮き彫りにしています。
本来、労働者が安心して退職の意思を伝えられる職場づくりが重要であり、代行サービスと、その利用者が増える背景には、会社側のマネジメントや職場環境の未整備があると考えられます。
また、法律的な観点からは、非弁行為(弁護士資格の資格のない者が行うこと)は禁止されています。
退職条件や未払い賃金などの交渉を含む業務は、私たち社会保険労務士や、弁護士でなければ対応できません。
つまり、退職代行サービスは最終手段として活用されるべきものであり、その前段階として、企業が社員と向き合う姿勢が問われています。
4.実際に退職代行サービスを利用した人へのインタビュー
今回、実際に「退職代行サービス」を利用した方にコンタクトができたため、
どのような理由で利用されたのか、実際に利用してみてどうだったか、その後のキャリア等、様々インタビューをしてみました。
利用者:Aさん(女性 / 利用時期:26歳 / 大手上場企業営業職)
今後の業務に強い不安を感じている旨を直属のマネージャーと人事担当者に相談したものの、
民法第627条当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から二週間を経過することによって終了する。参照: https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_3-Ch_2-Se_8
5.企業ができる対策
退職代行の利用増加は、企業にとって「従業員が直接辞めたいといえない職場」になっていることを意味します。
このような事態を防ぐために、企業側には以下のような対策が求められます。
1.心理的安全性の確保
上司と部下の間に信頼関係を築き、意見や悩みを気軽に相談できる職場づくりを進める。
2.退職プロセスの透明化
退職に関する手続きを明文化し、「引き留めない」「報復しない」ことを社内に徹底周知する。
3.ハラスメント対策の強化
相談窓口のへっちや定期的なアンケート実施などで、ハラスメントの芽を早期につかむ。
4.キャリア相談の導入
定期的な1 on 1やキャリア面談を行い、従業員の不安や希望を早期に把握する。
5.社外相談窓口の整備
匿名でも相談できる外部機関を活用し、社内に言いにくいことも言える仕組みをつくる。
このような対策や整備をすることで、労働者にとっても、会社側にとってもよりよくなっていくと考えます。
社労士の私から、あなたへ
「もう辞めたい」「でも、迷惑をかけるかもしれない」「生活も不安」──そんな風に思いながら、毎日を頑張っているあなたへ。
働くことは生きるうえで大切な要素ですが、何よりも大切なのは “あなた自身がどうありたいか” という気持ちです。
会社を辞めるという選択は、決して“逃げ”ではありません。
環境を変えることは、時にとても勇気がいるけれど、それが 次の一歩につながる大事な行動 になることもあります。
悩んで、迷って、立ち止まることも全部ふつうのこと。
ただ、あなたには“辞める自由”も、“未来を選ぶ権利”もちゃんとある、それをどうか忘れないでください。
制度や手続き、トラブルのことなど、不安なことがあれば、私たち社労士がサポートします。
ひとりで抱え込まないで、安心して相談してくださいね。
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