意外と知らない!?「試用期間」と「試みの期間」の違い

みなさんこんにちは。

新年度を迎え、新たな環境で日々頑張っているところかと思います。

朝晩の寒暖差もありますので、無理せず自分のペースでいきましょう。

1.「試用期間」と「試みの期間」の違い

1-1 「試用期間」と「試みの期間」、実は全然違うものって知っていましたか?

さて、本日のテーマは「試用期間」と「試みの期間」の違いについてです。

皆さんが就職するときや、雇用契約書を見たときに、
「試用期間あり」や「試みの期間」って言葉を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

しかしこの2つ、なんとなく同じような意味にも思えますが、
実は法律上はまったく別物なのです。

今回はその違いについて、解説していきます。

1-2 そもそも、「試用期間」とは?

「試用期間」は、主に正社員などの採用にあたって使われる言葉です。

会社側が「この人はうちの会社に合っているか?求めた水準で仕事をしてもらえるか?」かどうか様子を見る期間のことです。

試用期間中でも労働者の権利はしっかり守られる

これは「仮の雇用」ではなく、すでに労働契約が成立している状態です。

● 賃金:通常通り支払われます
● 保険加入:社会保険、労災・雇用保険も雇用形態に応じて加入対象になります
● 解雇のルール:たとえ試用期間中であっても、解雇には正当な理由+解雇予告が必要です

上記のとおり、会社側が「この人、やっぱり合わないな…」と判断し、解雇をする場合は、それに際して解雇予告や正当な理由が必要になります。

解雇にはリスクと責任が伴うのです。

1-3 では「試みの期間」とは?

一方で「試みの期間」は、あまり聞きなれないかもしれませんが、日雇い短期契約の労働者に使われることが多い言葉で、労働基準法の第21条に出てきます。

この制度では、採用してから14日以内であれば、会社は解雇予告なしで契約を終了(解雇)できるという仕組みです。

つまり、いわば「お試し期間」のようなもので、企業にとってはより柔軟に対応できる方法でもあります。

「本格的な採用の前に、ちょっとお試しで働いてもらう」ような仕組みともいえるでしょう。

このように、「試用期間」と違い、労働者の保護よりも、企業の柔軟性を重視した制度といえます。

 

● 対象:短期契約や日雇いなど、限定された雇用形態での採用時
● 解雇ルール:14日以内なら予告なしで契約解除が可能(解雇予告手当も不要)
● 15日目以降は通常どおり解雇予告が必要になる

ポイントは、14日間という限定された期間の中だけに認められている特例だということです。この期間を過ぎてしまうと、解雇予告やその手当が必要になるので注意が必要です。

弊社にも本件に関するご質問をいただくことが多いので、
その一例をご紹介します。

Q試用期間中であれば、理由なくクビにできますか?
Aできません。
   試用期間中でも「正当な理由」がなければ解雇はできません。
   さらに、原則30日前の解雇予告、もしくは30日分の解雇予告手当も必要です。
Q「試みの期間」はすべての人に使えますか?
Aすべてのひとに使えるというわけではありません。
   この制度は基本的に短期契約の労働者に限られます。
   正社員採用や長期契約者には適用されません。

2.気を付けたい契約時のポイント

ここまで、「試用期間」と「試みの期間」の違いについて、
それぞれ説明してきました。

違いをまとめましたので、ぜひこの機会におさらいをしておきましょう。

2-1 混同に注意!違う言葉には違う意味がある

「試用期間」と「試みの期間」、響きは似ていますが、
制度の背景も、法律の取り扱いも実際の使われ方も全然違います。

とくに、人事や労務の担当をされている方にとっては、
「試用期間中だからすぐに辞めさせられる」と勘違いして対応してしまうと、トラブルになりかねません。

◆ありがちな勘違い例◆

試用期間=会社の都合で自由に解雇できる期間?
A誤りです。
   試用期間でも、労働契約は成立していて、労働者の権利はしっかり守られます。
   解雇には「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められます。これは本採用後とほとんど変わりません。
試用期間だから社会保険は未加入でもOK?
A誤りです。
   要件を満たしていれば、試用期間中でも雇用保険・健康保険・厚生年金・労災保険に加入する義務があります。
   会社側が「まだ保険は入れなくていいでしょ?」と判断してしまっては、法令違反の可能性も生じてしまいますので、注意しましょう。

2-2 契約を結ぶ前に、ここをチェック!

「この書類、なんとなくでサインしてしまったけれど、大丈夫だったかな…?」と思うこと、ありませんか?

雇用契約を結ぶ前に、下記ポイントを確認しておくと安心です。

①「試用期間あり」の場合

・試用期間の長さは何か月か?
上限はありませんが、3~6か月が一般的です。
・試用期間後は自動で本採用になるのか?なにか評価項目や試験があるのか?
・試用期間中の待遇(給与・労働条件)は通常と同じか?
・保険加入や交通費支給etc…

細かい点も書面で確認しましょう!

②「試みの期間あり」の場合

・契約開始から14日以内か?
→14日を超えると通常解雇のルールが適用されるので要確認!
・雇用形態(短期契約・業務内容)は説明を受け、納得しているか?
・書面に「試みの期間」と明記されているか?
→あいまいな表現である際は、具体的な説明を受けましょう。

また、必要に応じて、口頭での説明だけでなく、追加の書面、難しい場合はメールやチャットの文章でも、残しておくことが重要です。

おわりに

「お試し期間」だからこそ、誠実さを大切に

企業にとっては、どちらの制度も「雇用リスクを抑えるための仕組み」。

一方で、労働者にとっても「その会社で自分の持っているスキルや経験を発揮できるのか」「その会社でできるだけ長く、気持ちよく働くことができる環境か」を確認する機関です。

制度の違いを正しく理解し、お互いに信頼できる関係を築くためにも、契約時の確認と丁寧な対応が大事です。

「お試し」の期間こそ、お互いをよく知ることができる貴重なチャンスなので、有意義に過ごしたいものです。

また、雇用契約に関して、不明な点がありましたら、私たちのようなプロにいつでもご相談くださいね。