
今年もワールドカップの季節がやってきた。
すでに我らが日本代表はベスト32で敗退となり帰国しているが、
改めて決勝トーナメント1回戦の振り返りをしたいと思っている。
※本記事はD.I.S.社会保険労務士法人所属の社員による執筆、上山明花による監修です。
【目次】
1.この試合の注目選手
ー日本代表
ーブラジル代表
2.決勝トーナメント1回戦 日本vsブラジルの90分を振り返って
ー前半
ー後半
3.サッカー日本代表が越えられない「決勝トーナメント勝利」の壁とは
4.4年後に向けての日本代表の組織体制・招集メンバー・課題
5.社労士目線でブラジル戦を考察する
余談 今大会の優勝予想と新たな形でのワールドカップについて
目次
1 この試合の注目選手
ー日本代表
佐野海舟(マインツ / ドイツ)
前回のスウェーデン戦ではサブからのスタートだったが、今回は先発出場。
ポジションはボランチ(MFの中でディフェンダーの前に位置し、守備の要および攻撃の起点としてチームの舵取りを担うポジション)だが、恵まれた体格と豊富な運動量でボールを奪う、ドリブル、シュートと自分ひとりで完結できる力があるのは、鹿島アントラーズ時代にも高く評価されていた。
ーブラジル代表
カゼミーロ(マンチェスターユナイテッド / イングランド)
佐野と同じポジションのボランチではあるが、細かな違いは4バックの前に一人で配置される「アンカー」として今回は起用。(1人で広範囲を守っている状態)
自分の対応すべきエリアが広いほど高い運動量が必要かつ、各所へボールが通らないように守備をする必要もあり、また自分が攻撃の起点となるゲームメーカーでいる必要もある、かなり責任のある役割。体格もしっかりしているため対人能力にかなり長けている。
2.決勝トーナメント1回戦 日本vsブラジルの90分を振り返って
ー前半
ブラジルの監督、カルロ・アンチェロッティは前半は中央の数的有利狙いをしており、日本側としては「え、なんかいけそうじゃない?」と感じさせる45分間だったと思う。
サイドからクロスを上げたり、縦パスを入れてチャンスを量産する日本に比べ、ブラジルの攻撃は比較的穏やかなペースで、慣らす・流すように過ごしていたように見受けられた。(これものちにアンチェロッティの戦術の1つであったことが公言される)
29分、佐野がセンターでパスカット、そのままゴールへ向かってドリブルで運びシュート。しかも、左の隅という絶妙なコースで相手DFもカットすることができず、ゴールに吸い込まれていった。
これを佐野一人で完結させており、それもまた圧巻であった。
自チームの攻撃の動きでスペースができた、というよりかはブラジルの守備陣が全員ボールを保持している佐野に注目していた。佐野は自分でシュートコースを決めて振り切っていた。このワンプレーは多くのファン・サポーターや解説者から高く評価された。
日本にとってはかなりアグレッシブな前半ではあった一方ブラジルの動きが決して悪かったわけではなく、様子見していた時間である、いわば戦略のひとつとして動いていた時間だったといえる。
ー後半
このまま同じ流れでもう1点が欲しい展開だったが、アンチェロッティのプランB「サイドからのクロス」から攻撃の起点を作っていく展開に変わっていた。
■ブラジルのクロスを上げた数
前半:12本
後半:28本
(戸田和幸氏集計によるデータを引用)
上記の数字からも、クロスを上げた数は倍違うことがわかる。
前半でのやり方ではブラジルにとって有利に進められないということが分かったため、後半でクロスを上げて攻撃参加をする形に切り替えることが有効だと判断したのだろう。
かなり攻め込まれた展開で、前半で奪った1点を守り切りたいところだったが、52分ごろからその雲行きは怪しくなり、カゼミーロのダイビングヘッドは何とか守るも、ついに56分に警戒していたカゼミーロがクロスに合わせてまたもやヘッド、ゴールを決められてしまう。
57分にもヴィニシウスジュニオールの技ありドリブルからのシュートが鈴木彩艶の左手にかすりコースが変化、そのままバーにあたり何とか免れたが、66分、マルティネッリの投入でさらに攻撃は激化、日本にとって苦しい時間が長く続いた。
試合が大きく動いたのはアディショナルタイムに入ってから、95分、田中碧がブラジルからボールを奪ったものの、再度ロストしてしまい相手の足元へ、そのままパスがつながってしまい後半投入のマルティネッリによるシュートは鈴木彩艶の手に触れるも、ゴールに吸い込まれて行きファイナルホイッスルが吹かれる。
3.サッカー日本代表が越えられない「決勝トーナメント勝利」の壁とは
予選のグループリーグでは、強豪チームが立ち並ぶ中しっかりと勝ち点をもぎとり決勝トーナメントに進む力がかなりついてきたように見える。
が、しかし、日本の前に立ちはだかる壁は毎回かなり大きく、1回戦で敗退してしまいベスト8(今大会においては2回戦勝利によりベスト8となる)に進めないのが課題だ。
これは「運」もあるが、日本の属するグループFは、
1位通過:オランダ→1回戦でモロッコに敗北
2位通過:日本→1回戦でブラジルに敗北
3位通過:スウェーデン→1回戦でフランスに敗北
と、すべての国が決勝トーナメント1回戦で負けてしまっている。
これはトーナメントでぶつかる国が、大会開幕前の抽選によりグループ編成が決まり、
それにより相性がよくなかったり、強豪国に必然的にぶつかってしまうようになってしまっていた。
一方で、抽選や組み合わせだけでは説明できない部分もある。
世界の強豪国は苦しい展開でも試合を決め切る個の力と選手層を持ち合わせている。
日本が次の壁を越えるためには、運だけでなく総合力の底上げも必要だろう。
そのためにはどうしたらよいのか。
4.4年後に向けての日本代表の組織体制・招集メンバー・課題
本記事では佐野海舟をかなり評価しているが、ほかにもMFの前田大然、堂安律、伊東純也の起用が攻守ともにかなり効いていたと思った。
前記4人もとても良かったが、一方で替えの効くMFの招集人数が少なかったこともまた課題だろう。
前線、守備陣以上に体力や視野の広さを求められるポジションだからこそ、少し人数を多く招集しておくと安心して試合に臨めるのではないか。
また今回はケガで欠場となった三笘薫、遠藤航はじめ、大会中にケガに見舞われた久保建英が決勝トーナメントまでに調整が間に合わなかったため、MFの人員不足は深刻だったといえる。
日本はこの数大会の間に、欧州でプレーする選手の数が日本(Jリーグ)でプレーする選手の数を上回り、今大会では3名(うちGKが2名)と、フィールドプレーヤーの多くが名門やビッグクラブ、タイトルホルダークラブで活躍する選手たちが揃っており、プレースタイルや個の力も大きく変化した。
予選から見ていて感じるのは、「どこか惜しい」「なぜか手が届かない」という感情で、
それは初心者から専門家まで同じ意見なのではないか。
この「痒いところに手が届く」ようにするためには、どんなスタイルのサッカーにも対応できる力をつけつつも、攻守ともにフレキシブルに考え、動く個の力をさらに磨く必要があるのではないかと考える。
より多くの選手が欧州で活躍できるようになりつつも、日本ならではの戦い方ができるオリジナリティがあわさることでさらに手ごわい組織づくりになっていくのではないかと考える。
5.社労士目線でブラジル戦を考察する
今回の大会を通じて感じたのは、優秀な選手が揃うことと、安定して勝ち続けることは必ずしも同じではないということだ。
日本代表は確実に強くなっている。
欧州のトップリーグやビッグクラブで活躍する選手も増え、個々の能力だけを見れば世界との差は確実に縮まっているように感じる。
それでも、ケガやコンディション不良による離脱、相手チームの戦術変更、試合終盤の疲労など、さまざまな要因によって結果は大きく左右される。
だからこそ重要なのは、一人のスター選手の力だけではなく、誰が出場しても一定のパフォーマンスを発揮できる選手層の厚さや、状況に応じて戦い方を変えられる組織力なのではないだろうか。
これは企業にも共通しているように思う。
どれだけ優秀な社員がいても、その人だけに業務や知識が集中してしまえば、不在になったときに組織全体が大きな影響を受ける。
また、市場環境や顧客ニーズの変化に応じて柔軟に対応できなければ、継続的に成果を上げることは難しい。
人材育成を行い、複数の人が役割を担える体制を整え、状況に応じて戦略を変えられる組織を作る。
そうした積み重ねが、サッカー日本代表にとっての「ベスト8への壁」を越える力につながるのと同じように、企業にとっても持続的な成長につながるのではないだろうか。
世界との差は確実に縮まっている。
だからこそ、その「あと一歩」を埋めるために何が必要なのか。
今回のブラジル戦は、サッカーの面白さだけでなく、強い組織をつくることの難しさと重要性についても考えさせられる一戦だった。
余談 今大会の優勝予想と新たな形でのワールドカップについて
優勝予想:スペイン(と思ったが試合を見ているとフランスかも…)
前回大会は現地で観戦した身として思ったことは、
・ハイドレーションブレイク:
スポンサーのしがらみ等があるのだろうが、個人的にはこの3分で試合展開がかなり変わる(それまで流れがよかったチームは維持が大変、流れが悪かったチームは立て直しのチャンスにつながる)。今までは45分通しで試合が展開されていたが、新しい競技かと思うほど流れを大きく変えるルールだと感じている。
・3か国開催:
これによりスケジュールの調整や、今回は大移動も兼ねる大会のため、選手の疲労等にも影響するのではないかと思った。また天候に変化の起こりやすい山間地帯にあるスタジアムでは雷雨、豪雨による影響もみられた。
・参加国数の増加:
前回は32か国だった参加国数が、今回は48か国と増え、各国は参加できるチャンスが増えたものの、一方で決勝トーナメントも1回戦を突破してもやっとベスト16(これまでは1回戦突破ではベスト8)と、優勝までの道のりが長くなってしまった。また、3位通過でも決勝トーナメントに進出できる可能性が出てくるレギュレーションとなってしまったため、3位通過でもいいから、、というような考えのあるチームもあったかもしれない。そういった意味では、前回までの上位2チームに死に物狂いで食い込むパッションが薄れたようにも感じた。
今回の大会を終えた後、FIFAはどのようにワールドカップを運営していくのかまだわからないが、「できるだけサッカーの形を変えずに」、また「強豪国がバチバチと当たる祭典」になるのが理想だ。
7月20日までまだ歴史を変える瞬間を目にしていきたい。

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