近年、夏の猛暑が恒常化しており、
気温35度を超える日が続くことも珍しくなくなってきました。
地球温暖化の影響を背景に、気温の上昇は長期的なトレンドとされており、今や熱中症は、「一時的な夏の出来事」ではなく、企業が継続的に対応すべきリスクのひとつとなっています。
今回は、企業における熱中症対策についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1 なぜ今「熱中症対策」が企業に求められるのか
前述した背景から、屋外作業や空調の効きにくい屋内作業、物流作業を中心に、熱中症による労働災害のリスクが高く、実際に毎年多くの休業・死亡時案が報告されています。
企業には、労働者の安全と健康を確保する「安全配慮義務」が課せられており、熱中症対策はこの義務の一環として、もはや避けては通れない課題となっています。
2. 熱中症は「労働災害」である
熱中症は、労働中に発生した場合は労働災害として認定されるケースもあります。
労働安全衛生法第3条に基づき、事業者は「労働者の危険または健康障害を防止するために必要な措置を講じなければならない」とされており、きちんとした対策や措置を取られていない場合は責任を問われることもあります。
例として、
・猛暑の中長時間にわたる作業をさせたのにもかかわらず、十分な休憩を取らせなかった
・空調設備のメンテナンスを怠ったため、代わりに扇風機しか使うことができなくなってしまった
上記が原因で労働者が熱中症になってしまった際、
会社が注意を怠ったとみなされることがあります。
こうしたことが起きないように、熱中症対策や、必要な措置を講じることが大切です。
3. 厚生労働省が出している熱中症のガイドライン
とはいうものの、実際に熱中症対策のために、
どんなことをしたらよいのかわからない事業者も多いかと思います。
厚生労働省では会社向けに、職場での熱中症マニュアルという資料を出しており、そこでは
・暑さとそれに伴う危険レベル
・熱中症の疑いがある際は、どのようにして休ませればよいか
など、わかりやすくまとめられています。
参考: https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/manual.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001098903.pdf
特に使われているのが、WBGT(暑さ指数)という数字です。
これは、温度・湿度・日差しの強さを合わせた指標で、この数字が高くなると、熱中症の危険も高くなります。
また、毎年夏には「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」も行われており、ポスターやチラシなど、職場で使える啓発ツールも配られています。
4. 今すぐできる!熱中症対策
熱中症対策といっても、特別なことをしなければならないわけではありません。
今すぐできる、ちょっとした工夫の積み重ねがとても大切です。
例えば、
・作業場所の温度や湿度を常にチェックしておく
・熱い時間帯の作業を避け、朝や夕方以降にずらす
・冷房や日よけを設置する
・水分や塩分がとれるよう、会社側で飲み物や塩飴などを用意する
・風通しの良い作業着や、冷却グッズを活用する
あらかじめこうした対策をしておくことが、
働く人の命を守ることに繋がります。
5. 熱中症について、ちゃんと理解していますか?
どれだけ環境を整えても、働く人自身が「熱中症かも?」と気が付けることもとても大切です。
・ぼーっとする
・汗が出ない
・立ち眩み、めまいがする
・倦怠感や、吐き気がする
・大量の発汗
・高熱
このような体調の変化を感じる、或いは、周りにそのような症状が出ている人を見かけたら、迷わず声をかけたり、自分からアクションを起こして状況を伝えることが大切です。
社内での熱中症対策の研修や、情報の周知をすることも効果的です。
6. ルールを決めて、習慣に
熱中症対策は、「その場しのぎ」ではなく、会社全体のルールとして決めておくことが大切です。
例えば、
・暑さ指数が○度を超えたら必ず休憩をとる
・○時~○時は屋外作業を避ける
といったようなルールをあらかじめ決めておくと、現場でも迷わず指示や対応ができます。
おわりに これからの時代に合った、快適な職場づくりへ
熱中症は、ちょっとした注意と行動で防ぐことができるものです。
最近では、新しい技術を使った熱中症対策も注目されています。
例えば、腕に就けるセンサーで体温や心拍数をチェックし、体調が悪くなりそうなときに教えてくれるものや、自動で温度・湿度を調整する空調システムなどです。
屋外での仕事だけでなく、空調の効いた部屋でのデスクワークでも、ちょっとした用事や商談で外に出る際に熱中症になってしまうケースも見受けられます。
熱中症は、どんな職場、どんな業務に従事していても起こりうるものだということを今一度意識しておきましょう。
また、「働きやすい職場をつくること」が、社員の健康やモチベーションにも繋がります。
熱中症対策は、単なるリスク回避ではなく、会社全体を元気にする取り組みにもなるのです。
私自身、業務外ではありますが、
熱中症になった経験があります。
「まさか、自分が?」「こんなことで?」
当時の私はそう思いました。
熱中症は、自分が思っている以上に簡単になってしまいます。
そして、自分が思っている以上に、対策が足りないものです。
だからこそ、会社としてできること、一人ひとり常に気を付けること、
その両方が大切です。
暑い夏をみんなで元気に乗り切るために、
今年も、できることから始めてみましょう。
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