
みなさんこんにちは。
ここ数年で、カスハラというワードをよく耳にするようになりましたね。
よく聞くものの、カスハラの定義とは、実際どのようなものなのかを改めて確認してみましょう。
カスハラは「カスタマーハラスメント」の略。
顧客等からの著しい迷惑行為等(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用
する労働者が就業環境を害されること。
カスハラという言葉自体、世の中に浸透してまだ浅いため、
政府でも具体的な定義づけがない、というのが現状です。
しかし、厚生労働省の統計によると、カスハラの相談件数が増加していることが明らかになっています。
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001259093.pdf
こういった数字が出ている以上、カスハラにより心が傷ついてしまった方や、
それにより休職や退職を余儀なくされた方も生じてしまっているのが現状です。
受け取る側の捉え方を変えることも手ではありますが、
世の中のすべての人がそうポジティブに受け止められるわけではありません。
会社に貢献してくれる社員を守ること、そして、自分自身がカスハラの加害者にならないためにも、
どのような対策とフォローができるか、一緒に考えていきましょう。
目次 [非表示]
1.
カスハラの発生しやすい職場とは?
1-1.接客業に多い理由
「カスタマー」のワードが入っているだけあり、下記のような顧客と直接接する機会の多い業種で特に発生しやすいといえるでしょう。
接客業
飲食店
酒類を扱うレストランや居酒屋は特に、酔った客による理不尽な𠮟責や要求が発生する可能性があります。
ホテル
特に、ランクの高いホテルでは、より丁寧で質の高い対応を求められます。
公共交通機関
人身事故による遅延や遺失物の対応など、会社側に非のないことでも、直接クレームを受ける機会があります。
教育機関
面談等の場で、子の成績に対する不満や、授業の内容、また生徒同士の人間関係の相談が度を越えたものに繋がる可能性があります。
販売スタッフ
化粧品やジュエリーを扱う店において、使用後に満足のいかない商品に対して返品の要求や、クレームを受ける可能性があります。
セールス
特に個人に対する営業活動において、無理を強いるものは、直接怒りの言葉を受けることもあるでしょう。
1-2.カスハラの発生する要因と背景
前述した業種でカスハラが起こりやすい要因として、
「顧客と直接かかわる機会」や「クレーム対応」が多いことが挙げられます。
そんな中で、カスハラはなぜ起こり、現代社会の問題となっているのでしょうか?
その背景には、社会的・心理的な要因が絡み合っているといえます。
行き過ぎた顧客第一主義
日本は「お客様は神様」という価値観が昔から強く根付いています。
実際に、サービス業をはじめ、様々な企業の社訓や行動指針でも、「お客様のためを考える」「お客様にとって常に最高のサービス」「お客様の笑顔をつくる」など、常に顧客ファーストの考え方が広まっています。
しかし、この考えが行き過ぎてしまい、「自分はお客様なのでどんな要求でも聞いてもらえる」「自分はお客様だから何をしても許される」という考えになる人が増えたのは大きな要因だと考えます。
SNSの影響
最近では企業やお店の悪評やクレームをSNSに晒すケースも増えています。
声を上げ大事にすることにより、要求を聞いてもらいやすくなるという誤った考えが広まってしまっているのも要因のひとつと考えられます。
SNSは匿名で顔も出さずに投稿ができる場ではありますが、一度投稿してしまうと、その拡散力はものすごく、内容によっては企業側から損害賠償等を求められ、取り返しのつかないことになりかねません。
このような社会的背景に加え、悩みやストレスが多い環境では、カスハラが発生しやすくなると考えられます。
1-3.意外な職種でも発生するケース
接客業をはじめ、直接顧客とかかわるような業種・職種だけでなく、顧客と直接関わる機会が少ないポジションでも、カスハラを受けることがあります。
エンジニア
急速な電子化が進む中、ゲームや動画サービスなどのサービスはもちろん、電子申請や交通系ICなどの公的サービスが使えなくなってしまう際に、カスタマーセンターを超えて、エンジニアや開発部門に直接クレームを入れ、執拗な修正要求を受けることもあります。
デザイナー
アパレルやグッズなど、新作の発表後に「センスがない」「前のほうがよかった」など、意見を超えた中傷的な言葉を直接投げかけるケースもあります。
企業の広報担当者
公式SNSのコメント欄にて必要以上に過激な言葉を受ける可能性があります。また引用リツイートによる炎上の可能性も考えられます。顔や実名を出しての発信は注意が必要です。
管理職
取引先からの休日の緊急対応を要求された際、通常窓口となっている部下の代わりに対応せざるを得ない可能性もあるでしょう。
このように、カスハラは「接客業」だけの問題ではなく、直接顧客対応をしない職種でも発生しうるのです。
2.
カスハラと判断されるべきポイント
では、実際にどういった点がカスハラと判断されるポイントになるのでしょうか。
2-1.心理的負荷の強度を「強」と判断する具体例
厚生労働省で出している「精神障害の労災認定」内に、カスハラによる心理的負荷を「強」と判断するケースが記載されています。
https://jsite.mhlw.go.jp/ishikawa-roudoukyoku/content/contents/001573258.pdf
・顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた
・顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた
・顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた
・顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会的通年に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を反復・継続するなどして執拗に受けた
これはあくまで、心理的負荷を「強」と判断するものですが、
この基準に合わせて判断すると、ここからカスハラと判断する事象は相当なレベルになるのではないでしょうか。
しかし、事の大小ではなく、
実際に顧客からの言動により「傷ついた」「精神を病ませてしまった」という
受け取る側にもっと寄り添って判断してあげるべきだと考えます。
2-2.実例から考える
2-3. 判断に悩んだ場合は
前述した例は、ほんの一部にすぎませんが、
カスハラかどうかの判断基準は、「正当な要求か?」「従業員や会社側が心身ともに必要以上の負担になっていないか?」という点にあると考えます。
実際に一緒に働く社員からカスハラについての相談を受けた際、また、自分自身が顧客の言動により違和感や嫌な感情が沸いたときに、
「でもこれってカスハラとまではいかないのかな…」
と思わずに、まずは心を許している人、相談のしやすい人に話してみましょう。
社内の上司や同僚、またカウンセリング等相談できる先がある場合は、
一度相談して状況をしっかりと伝え、措置をとってもらうことが大切です。
会社側でも判断が難しかったり、対応法に困ってしまった場合は、
社会保険労務士や、警察に相談することをおすすめします。
一番避けたいのは、「カスハラとまでは言えないだろう」と自己判断し、事態をさらにエスカレートさせてしまうことと、気が付いたら追いやられてしまい、心身ともにダウンさせてしまうことです。
3.
大切な社員を守るために
現代社会では、会社選びの際に「ハラスメント対策や措置」があるかどうかも大事なポイントになりつつあります。
大切な社員を、カスハラから守るためにできることはあります。
安心して社員に働いてもらえるよう、マニュアルの作成や、対策をしておくことが、長期的な人材の確保や、企業イメージのアップにも繋がります。
3-1.カスハラから自分を守るための考え方・心の持ち方
お客さんからの言動に違和感を感じたり、過度に嫌な気持ちになった際は、迷わず自分の心に耳を傾けましょう。
もちろん仕事である以上、きちんとした対応が求められますが、その要求が過度である場合は真摯に受け止める必要はありません。
下記3つのことを意識しつつ、必要に応じて心を許せるひとから順に相談し、対策を打ったり、措置を講じてもらうようにしましょう。
●すべての要求に応える必要はない
「会社で決められた範囲までは対応する、それ以上は難しい旨うまく伝える」と意識づけることは重要です。カスハラの加害者は無理な要求をし通してもらうことで、「自分の要求がすべて通るのが当然」と思い込んでいます。
自分自身が疲弊し、会社にも負担のかからぬよう、ボーダーラインをきっちり設ける意識が大切です。
●「お客様は神様ではない」という意識を持つ
企業と顧客は対等な関係であり、不当な要求に応じる必要はありません。
「丁寧な対応をする」ことは、「どんな要求も受け入れる」とは異なるのです。
自身だけでなく、一緒に働く同僚からこの考え方を浸透させ、組織全体で共通認識を持つことができれば、フォローの体制も整えやすくなると考えます。
●何よりもまず、「自分の一番の味方」になること
カスハラを受けることで、「自分のせいで…」と必要以上に自分を責めてしまうことがあります。ですが、真摯に対応したあなたに責任はなく、問題はカスハラをした本人の問題です。
理不尽な暴言を浴びた際や、必要以上の強要をされた際は、
「この人は、ストレスをぶつけているだけだ」
と考え、精神的ダメージを減らして自分自身を責めすぎないことが大切です。
3-2.会社が行うべき対策・ケアの体制
社員一人ひとりの意識が持てたとしても、会社側でも対策や制度を整えない以上、何か大きな事態になった際に助ける術がなくなってしまいます。
●「カスハラ対応マニュアル」の整備
従業員、社員がカスハラに遭った際に、適切な対応ができるよう、指針を明確にすることが重要です。
・「許容できるクレーム」と「カスハラ」の線引き
・カスハラを受けた場合の対応フロー
・「録音・監視カメラの活用」などの証拠収集の手段を持つ
このように、監視の目があることで、カスハラだけでなく、様々なトラブルから社員を守り、また証拠としても活用できます。
また、フローを明らかにし、周知しておくことで、同僚同士でも助けに入れたり、上司へスムーズに連携し、解決に近づけると考えます。
●従業員のメンタルケア・相談窓口の設置
カスハラにより社員、従業員が精神的に追い詰められないよう、相談窓口の設置、カウンセリング制度の導入をし、常に助けを求めやすい環境にすることも重要です。
実際に、筆者が以前お世話になっていた会社では、月に数回、無料でカウンセリングを受けることができる制度が導入されており、利用していました。
また、接客業やカスタマーサービスなど、顧客との距離が近い業種に関しては、悪質なケースの場合に警察や弁護士に介入してもらえるよう、マニュアルやルートを設置することもよいかと思います。
4.
働いている人の声
カスハラとまでは言えないかもしれないけれど、嫌な思いをした…
仕事をしながらそう思う人が私の周りにも見受けられました。
すべてをカスハラと認定するのは難しいですが、少しでも社員、従業員が
気持ちよく働くための環境づくりが必要といえます。
下記は実際に私の周りで起こった出来事です。
Jさん(20代 / 男性 / 飲食業)
お会計のタイミングでそのことを知ったお客さんが、
「現金持ってないんだけど!どうしてくれんだよ!」と大きな声で怒鳴られ、
嫌な思いをした経験があります。
カスハラとまではいかない事例ではありますが、
店員や周りのお客さんがびっくりするほど怒らなくても…という気持ちになりました。
上記の事例のように、伝え方ひとつで印象が大きく変わってしまいます。
これだけではカスハラと断定しづらいですが、
ほかのお客さんもびっくりするほど怒っていたため、さらにヒートアップをしてしまうと
警察沙汰になったり、カスハラと認定されてしまう可能性が出てきます。
Yさん(20代 / 女性 / 営業職)
サービスに登録された電話番号に営業電話をした際、そのまま必要以上にプライベートな内容の質問をされたり、セクハラといえる発言を長々受け続けた挙句、電話が切れないような状況が続き、またリモートワークのため助けを呼べない環境下にあり、過呼吸になってしまいました。
当時は「カスハラ」に関するマニュアルが整っていなかったため、どのような対処をすればよいか判断ができず焦ってしまいましたが、その後、女性の先輩に相談をしたところ、マニュアルやフローが整い、今は仕事がしやすくなりました。
このように、実体験から整備やルールが制定され、
働きやすさの向上につながるケースもあります。
すぐに動き、改善をはかれる職場は今後さらに重宝されるといえるでしょう。
また、上記件は顧客からのセクハラはもちろん、カスハラと、業務妨害にも該当すると考えられます。
Tさん(20代 / 男性 / 整体師)
長らく対応している患者さんより、施術の効果がまったくないどころか、
初回に主訴した場所とはまったく異なる部位が痛み出したとクレームを受けました。
最初は親身に対応していましたが、「いつ治るのか」「まだ治らないのだが」
と執拗にメールがくることにより、仕事に集中できなくなってしまうほどのストレスでした。
現在も続いているため、上司に相談し、対応を進めてもらっています。
上記の事例はほんの一部にすぎませんが、
話を聞き、こんなにも社員や店員への対応が酷い方や、そのエピソードの多さに驚きました。
それと同時に、自分自身や周りの人はカスハラをしていないか?
きちんとした態度で接することができているかと振り返る機会にもなりました。
5.
自分自身が「カスハラ」の加害者にならないために
ここまで、職場におけるカスハラの対策について綴ってきましたが、最後に自分自身がカスハラを「する側」にならないために、心得ておくことについて述べたいと思います。
急激なインフレ、人間関係、将来への不安など、現代はストレスにあふれた社会になってしまっています。
束の間の癒しのために入店したカフェ、今日はご褒美を買うと立ち寄ったコスメショップ、息抜きにやろうとおもったオンラインゲーム……
そんな癒しや息抜きの時間に、オーダーした料理の提供が遅かったり、思っていた商品と違ったり、メンテナンスでサービスが使えなかったら、悲しいですよね。
しかし、どんな商品や料理、サービスにも、その先には必ず人がおり、彼らはわざとエラーやミスを生じさせているわけではありません。
「意見を伝える」という行為が、伝える側のスタンスと、その伝え方ひとつで
カスハラに変わってしまう可能性があります。
「相手には心がある」意識を持つ
どんなにひどいサービスを受けたとしても、「相手には心がある」という意識を持つことで、
自分がされたらいやな言動を防ぐことに繋がり、無意識のカスハラを防ぐことができます。
「クレームや意見は「建設的に」伝える
サービスや商品、対応に不満を感じた際に一番効果的なのは、冷静に、かつ具体的に伝えることです。
大きな声をあげたり、過度な無理を強いることはもちろん、暴言・暴力は、意見を伝えるのに適切ではありません。
また、怒りのあまり、度を越えた言動で自分自身が強要罪や業務妨害罪等の刑事責任を問われ、逮捕されるケースも少なくありません。
実際に、店員に土下座をさせSNSにアップして逮捕されたケースや、市役所に職員に、対応すべき事項ではない内容を執拗に告げ、業務を妨害したことで逮捕されたケースもあります。
https://www.nikkei.com/article/DGKDASDG0701V_X01C13A0CC0000/
https://news.yahoo.co.jp/articles/7310d05892d81335fc61cd8216ece1dd07afcd1c
たった一瞬の感情で、その後を大きく変えてしまうこともあるのです。
必要以上のクレームや要求は、刑事責任を問われることも…?
おわりに
「カスハラ」という言葉は数年前に現れ、現代の社会問題のひとつにもなったといえるでしょう。
筆者もこれまで、理不尽に詰められ続けられたり、大声で怒鳴られた経験がありました。
社会人になってからはもちろん、まだ社会経験の浅い学生時代のアルバイトでも
そのような経験をしたことがあり、当時は「つらい、きつい」という感情よりも、
「なぜこの人たちはここまで過度に怒るのだろうか」という気持ちになりました。
職場におけるカスハラから自分自身や、社員を守ることはもちろん、
自分自身がカスハラの加害者にならない意識を持つことも大切です。
「理不尽に怒られること」を苦手と感じる人は多く、特に若者は怒られる教育が減少した背景もあり、より苦手と感じる傾向があります。
一人ひとりの意識と、安心して働ける組織作りがより大事になり、
働く先として選ぶ会社も、ケアや対策に手厚いところが選ばれるようになっていくと考えます。
カスハラの問題を解決するには、個人と企業の双方が協力し合うことが不可欠です。「より良い働き方」を目指すためにも、一人ひとりが適切な意識を持ち、企業が安心して働ける環境を整えることが求められます。
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